婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
熱いキス


 挙式披露宴は、記念すべき私の二十三度目の誕生日に滞りなく執り行われた。

 私と結婚するという新さんの衝撃発言から速やかに結納を済ませ、慌ただしく準備は進められていき、毎週のように顔を合わせてはいたが恋人のような時間は一度もなかった。

 いや、正確に言えばあったのだが、ドレス選びから式場見学まで必ず誰かしらの付き添いがあったので、新さんは常に余所行き顔だったのだ。

 ドレスを着た姿をかわいらしいとか綺麗だとか褒めてもらっても、どうせ本心じゃないと分かっていたからちっとも嬉しくなかった。

 新さんがこれまで暮らしていたマンションに荷物を運び出したのは挙式の前日。といっても家にはなんでも揃っていたし、私が持ち込んだのはほんの少しの洋服と身のまわりの物だけ。

 アパレル業界のトップに君臨するアンシャンテリューの御曹司だ。やはりファッションにこだわりがあるのか、私服もルームウェアも新しく用意すると言われてしまった。
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