雨のリフレイン
6.思い出は少ない方がいい

卒業

そして。


国家試験合格発表前に卒業式。
三月半ばのその日は、どんよりとした雲が垂れ込め、雪が降りそうなくらい肌寒かった。


卒業式が行われる講堂。
保護者席に、母と洸平の姿があった。


「ちょっと、水上先生ったら保護者席に間違えて座ってるわ」
「あ、本当。やだ、誰か来賓席を教えてあげれば良かったのに」


柊子の周りがざわついている。
だが、柊子はそれどころじゃない。


「卒業生代表八坂柊子」
「…はい」


名前を呼ばれて立ち上がる。緊張のあまり体は震えていた。
柊子は卒業生代表として挨拶をすることになっていたのだ。
この日の為と母が用意してくれた袴姿で壇上に上がる。マイクの前に立つと、会場がよく見えた。
泣いている母。隣でカメラを構えているのは洸平だ。昨夜、自分は泣いてしまうからと母にビデオ撮影をお願いされたのだ。
保護者ばかりの席に、白衣こそ着ていないが若い洸平の姿ははっきり言って浮いている。


緊張しながら、柊子は挨拶を読み上げた。




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