二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて番外編『京都の夜』
「靭じゃないか。久しぶりだな。来てくれたんだ」

「そりゃ閉店と聞いたら、何をおいても駆けつけなきゃと思って」

「何年ぶりだ?」

「もう6年になるよ。東京に帰ってからは来てないから」

 現れたのは、四十過ぎのひょろっと背の高い男性だった。
 黒のTシャツに黒のジーパン、長い髪を無造作に後ろで括っていて、細縁《ほそぶち》の眼鏡をかけている。
 バーの店主というよりは、スタジオミュージシャンのような雰囲気の人だ。

「こ、こんにちは」

「へえ、彼女? ずいぶん若い子じゃない?」

「うん。原田夏瑛。おれの恩師の姪。今、大学1年なんだ」

「そうか……。よろしく。中村です」

 そう言って、右手を差し出された。

 おずおずと握手すると笑顔を向けてくれた。

 初対面の緊張をほぐしてくれるようなあたたかな表情だった。
< 2 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop