蛍火に揺れる
『家族』になる時

*****

それからの私たちの関係は、もう『順調』以外の何物でもなかった。


唯一決めたルールは『喧嘩を翌日に持ちこさない』だったけれど、そのルールが無意味なほど結局喧嘩や言い争いをすることはなかった。
毎日びっくりする程の穏やかな日々。それは彼が私のことを尊重してくれて…私も同じような気持ちで接することができたからだと思う。

気付けば、ノリ君がそばに居ることはごくごく当たり前で…私はすっかり彼に溶かされるように、全ての信頼を寄せるまでになっていた。


でも…一つだけ。
どうしても心に引っ掛かっていることがあった。

それはーノリ君の両親に会ったことがないということ。


いつも私の帰省には、ノリ君も付いてくるようになった。この前の正月なんか、私を差し置いて親戚の男性陣と盛り上がってたほど。
でもノリ君自身が帰省したり、そういう先が無いことも…何となくだけど引っ掛かっていた。『祖父母はもう亡くなってるし』なんて言っていたが、せめて両親には会うものじゃないか?とも。

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