一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
5.傲岸な夫のスイートハート

***

「セレブは一日にしてならず……」

 後部座席に沈みこむ私に、冷えた視線が注がれる。

「なによ、もうへばったの? だらしないわね」

 隣に座った伊都さんは、抱えていた大量のショップバッグを足もとに置き、小ぶりの紙袋だけを手もとに残した。

 車内は当然のように冷房が利いている。行く先々のお店ももちろん空調は快適に保たれていたから、外の蒸し暑さを体感したのは店舗と車を行き来する間だけだった。もはや夏の暑さを懐かしく感じるくらいだ。

「本当にお手頃価格よね。あの値段でこんなにかわいいなんて、掘り出し物だと思わない?」

 伊都さんは高級ブランドのロゴマークが入ったショップバッグから中身を取り出して嬉しそうに眺めている。ハートが組み合わさって花の形になっているかわいいピアスだ。

< 206 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop