愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
幸せなデートと不安



頭を打った時にできた傷は、だいぶ良くなっていた。
少なくとも髪で隠せるぐらい。

何度も洗面所の鏡と向き合い、変なところがないか調べる。


髪は巻いて、前髪も整えた。
いつもはあまりしないメイクも施した。

服もだらしなくないかとしっかりと確認する。


「いつまで鏡と睨みっこしているの?」

その時、先ほどまで部屋にいたであろう瀬野が洗面所に顔を覗かせる。


「うるさいな、遠出するんだからこれぐらい当たり前でしょ」

鏡越しに瀬野を睨む。
変に邪魔しないでほしい。


「それ以上綺麗になってどうするの?
他の男みんな、川上さんに注目するんだよ」

せっかく服を整えたというのに、瀬野が後ろから私を抱きしめてくる。


「もー、邪魔しないで。
服がシワになっちゃうでしょ」

「大丈夫だよ。
十分綺麗になってる」

「あんたが抱きしめてくるからシワになるの」
「……なんか、キスマークつけたくなるね」

「…っ、ダメ」


瀬野の指が私の首筋をトントンしてくる。
ここにキスマークをつけたいとでも言うように。


「じゃあ今日、ネックレス買いに行こう。
俺のものって証ね」

「まあ、それなら別にいいけど…」


ネックレスって、なんだか特別感があって嬉しい気もする。

瀬野のものだという証がそれって悪くない。

< 392 / 600 >

この作品をシェア

pagetop