エリートパイロットの独占欲は新妻限定
巧妙な罠はすぐそこに


世の中が長期休みで浮かれるゴールデンウィーク初日。由宇はバリ島のお土産を渡すため、佐奈がひとりで暮らすアパートにやって来た。


「これがお香で、こっちはアロマキャンドル。それからこれは柔軟剤」


紙袋から取り出しながら説明し、最後にテーブルにドンと音を立てて一リットルのボトルを置く。スーツケースの中で、これがもっとも場所を必要としたお土産だ。


「お香やキャンドルはわかるけど、なんで柔軟剤?」


佐奈は不思議そうにそれを持ち上げ、ラベルをじっと観察した。


「ホテルのランドリーで洗ってもらった服がすごくいい匂いでね、なんの柔軟剤が教えてもらったの」
「それで買ってきた、と」
「うん。ほんとにいい匂いなの」


かといって強く香るわけでもなく、ほのかに爽やかな匂いに包まれるのだ。あまりにも気に入ったため、スーツケースに入るだけ買い込んできた。

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