ボードウォークの恋人たち
「引っ越しも不動産屋に払う金も相当だぞ。コツコツ貯めた貯金が吹っ飛ぶ。そうでなくても今年はトモダチの絵画買ったり結婚式があったりでご祝儀貧乏だって言うじゃないか。トモダチの絵画ってあれだろ、詩音ちゃんの絵なんだろ?」

「それお母さんの情報だよね」
ムッとして思わず舌打ちしてしまった。

「だからここにいてまたコツコツ貯めればいいだろ。これ以上いい物件見つかると思ってんのか」

うー。
そうなのよ、こんな物件他にあるわけない。セキュリティ抜群で貯金もできるとか・・・。

「私がここにいて迷惑じゃないの?ハルは」

「迷惑だったらこんなこと言うか」

「えーっと、お付き合いしてる女性がいたりとかーー」

「はあ?」
いい加減にしろとハルの視線が冷たい。極寒ビーム。

「じゃ、じゃあさ、うん、ここでお世話になります。よろしくお願いいたします。でね、ご飯、ご飯作るよ。それと掃除、洗濯。それでどう?」

「いや、それだと水音の負担が重いからいい。そんなことしたら俺の食事を気にしてゆっくり休めなくなるだろ。お前真面目だし」

「ん、うーん・・・。あ、だったら出来る範囲でってことで。いらない日は連絡、わかってる日は先に教えて。洗濯はどうせ自分のもやるんだから一人分も二人分も変わらない。どっちも無理しない。できないときは出来ないって言うから」

ね、っとおねだり顔でハルの顔をのぞき込むとハルがふいっと目をそらした。

「・・・しょうがねえなぁ」

やった、勝った。
なんだかんだ言ってもハルは私のおねだりに弱い。

それからキッチンの壁に二人の勤務予定を書き込むスケジュール表を貼ることにした。これで大体のことがわかるし、急な予定変更はスマホに連絡を入れればいい。


それから私たちは新たに作ってもらった最後の1杯を飲んでお互いの部屋に引き上げたのだった。
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