白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

桃華side


☆桃華side☆

 自分の部屋で漫画を読んでいると
 ドアをノックする音が聞こえてきた。


「誰?」


「俺……だけど……
 ちょっといいか?」


 虎兄かぁ。
 気になっていたんだよね。


 虎兄が店を飛び出した後
 ちゃんと清香さんと
 寄りを戻せたのかどうか。


「別に、いいけど」

 そっけない私の声を聞いて
 虎兄が部屋に入ってきた。


 虎兄が私の部屋に来ることなんて
 滅多にない。


 だから絶対に
 私に伝えたいことがあって
 来たんだろうって思うのに

 ドアの前で立ち尽くしたまま
 一向に口を開く気配がない。


「何? 
 虎兄は何しに来たわけ?」


「別に……
 特に用とかはないけど……」


 明らかに私に伝えたいことがあるって
 バレバレなのに
 ムスッとした顔でうつむいている。


 は~。もう。

 言いたいことがあるなら
 スパッと言いなさいよ。

 
 そう思いつつ

 清香さんのこととなると
 弱っちくなっちゃう虎兄が
 かわいく見えてきて、
 ちょっと意地悪でも言いたい
 気持ちになった。
< 50 / 337 >

この作品をシェア

pagetop