白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

「俺……ずっと我慢してたから……。
 清香に……触れること」


「え?」


「俺さ、お前にバレるのが恥ずかしくて
 ずっと強がって隠してきたけど。

 清香が俺の隣にいるだけで
 結構心臓がバクバクしてさ。
 それを抑えるのに必死だった。

 学校で手なんか繋いだら
 その場でお前のこと
 抱きしめてしまいそうでさ。

 そんな恥ずかしいところ
 誰にも見られたくなくて」


「でも、虎ちゃん。
 よくこの部屋に
 遊びに来てくれてたでしょ?
 二人きりの時なら……」


「それこそ無理だって。

 2人きりの時に
 お前の手なんか繋いだら……
 俺、清香に何するかわからないから。

 自分のことを
 止められる自信ないし。
 お前に嫌われるのも怖かったし。

 でもさ、俺がお願いする服を
 顔が真っ赤になりながらも
 着てくれる清香を見るのだけは、
 どうしても止められなくて。

 この部屋で
 お前を抱きしめたいって思ったら
 思いっきりふくらはぎをつねって
 我慢してた」


「フフフ。
 虎ちゃん
 そんなことしてくれていたんだね。
 全然気づかなかったよ」


「当たり前だろ。
 そんな自分なんて見られたら
 恥ずかしすぎて、
 清香に気付かれた時点で
 この部屋から逃げ出してたからな。俺」


「そんな虎ちゃん
 見せて欲しかったけど」


「見せられるかよ
 そんな情けない姿なんか。

 でも俺さ……

 これからはお前に
 情けないところとか
 いっぱい見せると思うけど、いい?

 今までみたいに
 カッコつけられないかもしれないけど
 いい?」


「うん。
 だって、いろんな虎ちゃんを
 見てみたいもん。

 そして私に、甘えてくれたらいいな」


「は? 
 甘えるとかは……多分、ムリ」


「え!! 
 だって私ばっかり
 虎ちゃんに甘えてるじゃん。

 虎ちゃんの甘えるところも見たいよ。

 それが無理なら
 私は虎ちゃんが大好きって思ったら
 抱き着くことにする」


「は? 
 だから、お前に抱き着かれたらさ……」


「虎ちゃんなら、いいよ」


 俺の瞳をまっすぐみ見つめ
 とびきりの笑顔を見せた清香。


 だから
 そんな宝石みたいに
 キラキラした笑顔を向けられたら
 俺のリミッターなんて
 簡単に外れるんだからな。
 
 
「虎……ちゃん?」


「だから、そんな可愛い目で
 俺のこと見つめるなって。

 中1の時から……
 ずっと言えなかったけど……」


「え?」


「清香のこと……大好きだからな」


 俺は、ずっと心の中で温めていた
 思いを吐き出すと
 清香の顔を思いっきり自分に引き寄せ
 強引に唇を奪っていた。

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