お前が好きだなんて俺はバカだな
夏休み
さて、いよいよ待望の夏休みがやってくる。

夏休み...先輩とどこかに行くに限るなぁ...。

と、思ったのだが。

「夏休みも生徒会の活動は続くんだよね。
特に、この学校の治安維持に力を入れなくちゃ。」

マジですか。

まあ、夏休みにハメを外す人多いもんなぁ...。

でも、そんなの生徒指導の先生たちだけで十分なのに...。

「まあ、いつもの通り、次期生徒会長がいれば安心だよね。」

「だから...俺はいつから次期生徒会長になったんですか。」

「美礼が生徒会に入ってすぐ、私が決めた。」

「無茶苦茶ですね。」

「まあね。
でも、美礼はそんぐらい信用に値するってことだよ。
私だけでなく、学校の皆の信用だ。」

確かに。

いつも人を引っ張っていける力が、先輩にはあると思う。

でも、それはそれで私は置いていかれるだけなんだけど...。

「いざとなれば美礼の実力行使があるから。
皆恐れてハメを外すことはないだろうね。」

「先輩の実力行使ですか...?」

「そう。
こいつ優男スタイルのくせに格闘技系も強いから。」

そ、そうなの...?

本当に私、先輩のこと何も知らないんだな...。

「中学のとき、やさぐれた連中がいたんだ。
こっちは真っ当なこと言ってるつもりなのに、全然聞き入れてくれない。
おまけに女だからってなめられてたのがイラってきてさ。」

「...ついに面倒な喧嘩に発展しちゃったんです。
流石の僕も止めきれなかったところで、遠谷くんが現れて、仲裁してくれたんですよ。」

「そんなに大袈裟なことしてないですけど。」

「いやいや。あの時の美礼はめっちゃイケメンだったよ!
向こうから手出してきても、全然動じなかったし。」

イケメンって...。

なにそれ、私全然知らない...。

書記の薫子さんも、

「私もそこにいたんで覚えてます。
バットとか、ナイフとか向けられてた中で、遠谷くんだけ素手で応戦したんですよね。
歳下ながら、あっぱれでしたよ。」

と、先輩の武勇伝を語りだした...。

「いや、素手ではないです。
薫子先輩の持ってたノート借りてたじゃないですか。」

「あれは、遠谷くんが書記の記録を見たいと言っていたから喧嘩の直前に貸したものですし、第一、片手に持っていただけで、ノートは一切傷ついてませんでしたよ。」

「と、いうことは、素手でしかも実質片手で闘ってたんですか...?」

「そうです。」

「そうでしたっけ...。
あんまり覚えてないですね。」

「もー、なんで覚えてないのさ。」

「まあ、会長の場合、そうやって遠谷くんに助けてもらったことが何度かありますよね。」

「まあね。」

...。

先輩が、会長を何度も...。

私はもちろん一度も誰かに襲われたり、殴り合いの喧嘩なんてしたことないし、助けられたこともないのに...。

「とにかく、今年も美礼には夏期休業中の治安維持隊隊長を命じるってことで。」

「命じられても困ります。」

「暇があれば私も手伝うからさ。」

「手伝うって...。見てるだけですよね。
それに、俺、今年は...。」

「これも学校の安全を守るためだよ。
生徒指導の先生だけじゃ頼りないからさ。
またやさぐれた連中を生み出さないためにも、私たちが動かなきゃいけないんだ。」

そんな...。

せっかく先輩といっぱい色んなところに行けるって思ってたのに。
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