授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
終章 有罪なる溺愛
相変わらず私は外にも出られず、黒川さんにも連絡ができないまま実家での生活も一週間が過ぎた。笑い方も忘れてしまうくらい魂の抜けたような毎日は味気なかった。

黒川さんに会いたい。けれど、どんな顔して会えばいいのかわからない。一緒に食事をしたり、ソファに座って抱き寄せられながら映画鑑賞して過ごした日々が遠い昔のように思える。

目の前には私が生けたナガミヒナゲシやヒメジョオン、ホウチャクソウなど夏の花が色鮮やかに咲いている。けれど、今は嗜んでいた生け花も、ただ気を紛らわせる手段に過ぎなかった。

はぁ、このまま一生ここにいなきゃいけないのかな……。

時刻は午後二時。

ここにいるとものすごく時間が遅く感じる。パチンパチンとハサミで茎を切る音が和室に響くと、余計に虚しさが煽られた。

「菜穂さん、失礼します」

襖の向こうから声がして、顔をあげると板垣さんが黒のポロシャツにジーンズというラフな格好で立っていた。
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