悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 初夜の床にさえ来ず、純潔の乙女のまま朝を迎えた屈辱は今でもありありと覚えている。
 それは、年を重ねても変わらなかった。
 レオンティーナに見せつけるように、愛人を次々と取り換えた夫、社交の場でひそひそとささやかれる噂話。
 ――愛されなかった皇妃。
 その言葉は、レオンティーナのプライドをずたずたにした。
 政略結婚の何が悪い? 釣り合った家柄というだけで結婚するのは貴族ならば当然だ。責められるべきはレオンティーナではなく、義務を果たさなかったアンドレアスだ。

(私は、そんなに悪いことをしたかしら?)

 多少の散財は認める。
 皇妃にふさわしく装うには、美しいドレス、多数の宝石が欠かせない。美容のための高価な化粧品も。
 馬車での移動が快適になるように、馬車にも贅をこらしたし、招待客を唸らせるためには美食も欠かせなかった。
 たしかに、贅沢が過ぎると言われればそうかもしれないが、政治に関わらせてもらえなかったレオンティーナが知るはずないではないか。
 ――このヴァスロア帝国の屋台骨そのものが、砕けつつあったということを。
< 2 / 314 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop