みずあめびより
「・・・覚えてたのか?」

「忘れるわけないよ、最初に私が泊めてもらった日。あの日から全部始まったんだよね。今日は私達にとって初めての一周年記念日なんだよね・・・リンくんも覚えててくれたなんて嬉しいよ。」

衣緒は微笑みを浮かべて柔らかい声で言った。

「そっか・・・でも・・・。」

───俺達は大切な今日をこんな雰囲気で迎えてしまっている。

切ない気持ちが胸の中に広がっていく。

「なんだ、それなら。」

すると彼女は気が抜けたような声で言った。

「え?」

鈴太郎が困惑していると、衣緒は走って寝室に行きすぐに戻ってきた。

「これ・・・本当は夕飯の時に渡して『今日は記念日だよ。』って驚かそうと思ってたんだけど・・・。」

そう言いながら平たい箱を差し出され受け取る。

「何?」

「開けてみて。」

衣緒は予想外の展開にハテナマークを浮かべている鈴太郎の顔を見つめて、嬉しさと照れが混ざった表情で言った。
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