2度目の人生で世界を救おうとする話。前編




「…なんだよ」

「別に」


私の無言の視線に気付いたようで不審そうに私を武が見つめる。
何か文句でもあんのか?って顔を武はしている。

文句ではない。ただ私がこれから最終的に戦って負ける相手を見つめていただけだ。
1回目はそうだった。

私の能力は葉月家の家系なのでもちろん火。火は超攻撃特化型で、本当に攻撃一本しか使い道がない能力。戦闘においては最高に重宝されるけどそれ以外はお呼びではない。

対する武の能力は冬麻家の家系なので水。水はマルチ型で、水で軟化、氷で硬化ととても多彩な戦い方ができる能力である。

馬力なら火の方が断然上だが、水はそれをカバーできるだけのレパートリーが豊富であり、何より水と火は相性が悪い。
火がどうしても不利になる。

ポテンシャルは圧倒的に私の方が武より上だが、それでもそういったアドバンテージもあり昔から武と戦うと負けることの方が多かった。

だから今回も負ける…予定。

今の私は人生2回目なので1回目の今頃の私より実力が遥かに上だ。
1回目のあの過酷な人生を生き抜いてきたのだ。実力もそれに伴い上がっているに決まっている。

ここから仮定の話になるのだが、今の私の実力なら武に勝てるのではないか。いや勝てる未来しか見えない。

つまり前回とは違う実戦結果を出すこともできる、と。


『神様ぁ』

『どうしたのですか?紅』


取り急ぎ確認したいことができたので心の中で神様を呼べば、頭の中に優しげなあの神様の声が直接響いてきた。
神様は本当にいつも私を見守っているようで呼び掛ければ大体答えてくれる。
もちろん呼び掛けに答えてもらえない時も多々あるが。


『この大会って別に前回と同じ結果でなくてもいいんだよね?』


神様は言っていた。私は好きに生きていい、と。前回とシナリオの内容を変えるな、とか特には言われていない。

でも待てよ?世界が滅亡してしまった原因を探すために今神様はシナリオを見直している訳だ。そのシナリオを変えてしまっては面倒なことにならないか?











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