【完結】私に甘い眼鏡くん
二度目の初恋
卒業式当日、少し早めに教室に着いてみんなとの別れを嘆く。

今日は彼の合格発表だし、最近会えてなかったし、なんだか話すの緊張するな。

一通りみんなと写真を撮り終えて教室を出た。


「おーい」


ロッカーで一人スマホを触っている君の名前を呼ぶと、数秒後に顔を上げた。
彼のもとへ駆け寄る。


「卒業おめでとう」
「おめでとう! 写真撮ろ」


彼のカメラ目線の真顔にはもう慣れっこ。
撮った写真を確認したら自然と頬がゆるんだ。


「今日の打ち上げ行くのか?」
「うん。夕くんも来るでしょ? あ、終わったら今度卒業証書持って写真撮るからすぐ帰らないでよ」
「え、でも親」
「挨拶する気満々で来てるから私」


数秒唸ったあと、観念したのか「わかった」と返事がきた。


「HR始めるぞー」


先生の声に踵を返す。


「んじゃ、また後でね」


足早に立ち去って着席した。

彼のブレザー姿も今日が最後なんだな。
あとでピン写真撮っておこうと心に決めた。


今日の私はいつも以上に彼が好きだ。



担任の長い話を聞いたあとにクラスのみんなと卒業証書を持って写真を撮る。
廊下で彼と彼のお母さん、担任が話しているのが見えた。急いで教室を出た時はもう、担任の姿はなかった。
待たせて絶対怒られるな……と思いつつ二人の元へ。


「ごめん遅くなった!」
「遅い」
「ごめんなさい……」


案の定いつもより不機嫌な彼。と対照的に、にこやかなお母さん。

軽く咳払いをして挨拶をする。


「初めまして。彼とお付き合いさせていただいている望月彩です」


すると、お母さんの表情が一瞬で驚愕に変わった。


「お付き合い!? なにアンタ、さっき友達が来るって……」
「友達も数人来ただろ」
「彼女って情報もお母さんほしかったわ……」


結構仲良しなのかな。夕くん、お母さんに優しそうだし。
私は空気を読んで、一つ提案した。


「お二人の写真撮りましょうか?」
「あら、お願いできる?」


こうして並んでみると2人はよく似ていた。特に、白い肌とか、すっと通った鼻筋とか。

私にも二人を撮らせて頂戴、と彼のお母さんがシャッターをきる。
後で夕くんに送ってもらおう。

いろいろ話して、なんと今度お家に伺うことになった。


「じゃあ私、この後もちょっとあるから」
「また打ち上げ会場で」
「ん! じゃあね! 失礼します」


お母さんに会釈をすると、彼に「待った」と呼び止められる。


「なに?」


差し出されたスマホの画面には合格通知。
しかも、私と同じ大学。学部は違うが、同じキャンパス。


「え……」
「またよろしく」



眼鏡の奥で柔らかく笑う瞳を見て、私はまた恋に落ちた。

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