離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
離婚予定日ー夫は妻に愛を乞うー


 最初に泊めてくれた夜、佐伯さんは親身になって聞いてくれていた。そうして私が落ち着いたところで、ぴしゃりと言った。


「洗いざらい自分の気持ちをぶちまけたことは全然良いと思う。けどせっかく吐いたんだからとことん話してきたらよかったのに……そういうのって逃げてもしょうがないでしょ」
「……逃げかもしれないけど、それでいい。もうこんな自分になるのが自分で許せないから」


 クッションは濡れるから止めてくれと言われて、大きめのタオルを渡された私はそれに顔を埋めながらすっかり後ろ向きの感情に支配されている。


「案外、社長って鈍くさいんだなということに、今驚いてる……まあ、黙っててもモテた人だからね、逆に女の扱いなんて気にする必要がなかったのか……」
「大体さあ、大体……幼馴染ってもう、それだけで最強すぎない? 物語でもなんでも、幼馴染といったら初恋相手だったりして盛り上がるでしょ? 最初っから不安要素がありすぎる……!」
「いや、そんなこと言ったら世の中異性の幼馴染がいる人は全員アウトじゃない……まあ、言いたいことはわかるけど」


 佐伯さんは笑いながらぽんぽんと私の頭を撫でて、だけどどうやらこのまま逃げるのはよくないという考えのようだった。
 そうは言われても、一晩経ってちょっと頭が冷えれば、やっぱりもう二度とあんな感情は持ちたくないと思ってしまう。

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