寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
帰るまで待てない、文字では伝わらないとはやる晴久は、思いきって通話ボタンをタップする。
『……はい』
「細川さんっ」
呼び出し音の後、彼女はすぐに出た。
今にも消えてしまいそうな掠れた声だが、晴久はまずは出てくれたことに安堵する。
「いきなりすみません、今朝送ったメッセージのことでお話がしたいのですが。お時間ありますか」
『今……ですか』
「あ、いえ、時間を改めても。細川さんがいいなら、そちらへ出向くこともできますが」
『今は、外に出ています』
電話の向こうではかすかに雑音がしている。
(どこかの店内、か?)
彼女が声を抑えているのはそのためかと納得したが、わざわざ暗い中どうして外へ出ているのか、晴久は疑問に思った。