死んでもあなたに愛されたい

花弁





「ただいま、魁運」


「…………」




「今日ね、体育祭の種目が決まったよ。前回は途中で時間がきちゃって、今日のホームルームで残りを決めたんだ」


「…………」


「か、魁運は、100メートル走と棒倒し。あと、男女混合二人三脚! あたしとペアだよ!」


「…………」


「あたしがどうしても魁運と出たくって。影野さんたちに無理言っちゃった」


「…………」




「楽しみだね、魁運。楽しみたいね」


「…………」


「ねぇ、魁運」




……今日も返事はないんだね。




魁運が眠り続け、3日が経った。



あの日から一度たりとも、あたしの声に応えてはくれない。

ときおりうなるような声を上げては、汗とともに涙を流している。



3日って長い。

24時間が3回だよ? 地球が3回転もしちゃう。


その間に、右頬の傷も、腕の痕も治っちゃったし。

名前は呼ばれないし、触れてもこない。


さびしくて、さびしすぎて、夜な夜な泣いてるんだよ。




幽霊の暴走による反動だから心配しすぎないように。

そう、おじ様はなぐさめてくれた。


過去に何度かこのようなことがあったらしい。



あたしの大きな愛のパワーで、なんとか救えたと思っていた。

愛の力は偉大だ、って。


とんだ自惚れだったね。


あたしの気持ちはまだまだちっぽけで、足りないものばかりだ。


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