一匹狼くん、 拾いました。弐
駐車場に着くと、俺はぼーっとバイクを眺めた。
……俺の家族、こいつだけになっちゃったな。
誕生日プレゼントにと、岳斗と楓が俺に内緒で母親に頼みこんで、買ってくれたバイク。岳斗と楓が虐待されている俺の気も知らないで、一緒に教習所行って、免許取ろうって言ってきて。乗り気じゃない俺を無理矢理にでも教習所に行かせるためだけに、母親を通して父親を説得したそうだ。父親が金を払って買ってくれた唯一のプレゼントだ。楓と岳斗がいわなければ、絶対くれなかっただろうけど。
父さんや母さんが自分から俺にくれたものは制服や私服、それにスマフォや財布といった必要最低限のものしかないのに対して、岳斗達が俺にくれようとしたものは、そんなのとは比べ物にならないくらい、とてもいいものだった。よく考えたらその違いからしても、両親に愛されてないのは明らかだった。
二人と教習所通いたかったな。惨めな気分になった俺は、嫌な考えを振り払うかのように勢いよく首を振ると、エンジンをかけてバイクに跨った。
「ここでいいか」
路地裏にいくと、俺は人目がないのを確認してから、写真たてから写真を取りだした。
ポケットからライターを取りだし、火をつけて写真を燃やす。……これで本当にお別れだな。
俺は写真から手を離すと、そんなことを思った。
「ゴホ、ゴホッ!」
炎の煙を吸って咳き込む。
俺は傍にあった自販機で水を買い、燃えてる写真にぶっかけた。
「はぁ」
俺は跡形もなく灰になった写真から顔を背けると、ポケットから煙草の箱を取り出し、一本だけライターで火をつけて吸った。
それから俺は、葵のいるWhite cats に向かった。
バイクを駐輪場に停め、White catsに入る。
「いらっしゃいませー。……銀!」
フロントにいる葵が、俺を見て目を見開く。
「悪い、ちょっと外すわ」
葵は他のスタッフの奴にそういうと、俺のそばまで歩いてきた。
「お前大丈夫なのか? 華龍の奴らすごい心配してたぞ?」
眉間に皺を寄せて、葵は言う。
「葵、何も聞かずに泊めてくんない。二階、お前の部屋になってんだろ」
「……分かった」
そういうと、葵は俺を二階まで案内してくれた。