俺様パイロットに独り占めされました
鬼機長の修羅場に遭遇したら
私は、幼い頃から、青い空が好きだった。
家族の話によると、まだ物が見えていない乳児期でも、獣並みに触角が働き、晴れて天気のいい日はご機嫌だったそうだ。


幼稚園の遠足で撮った集合写真では、私一人、ポカンと口を開けて空を見上げているし、運動会の駆けっこで、前ではなく上を向いて走っていて、激しくすっ転んだ記憶がある。
小学生になって、初めて読んだ世界の偉人の伝記物語は、大半の人がヘレンケラーとかキュリー夫人、野口英世などと答える中、私はライト兄弟だった。


とにかく大空に憧れるあまり、空を飛ぶ飛行機に関する物はなんでも大好き。
近所の男の子に混じって、将来の夢は『パイロット』と、中学生くらいまでは真剣に豪語していた。


だけど残念ながら、私にはパイロットを目指すほどの能力がなかった。
自分で飛行機を飛ばすという大願は成就しないまま、大人になり――。


私、酒匂(さこう)(はるか)。二十六歳。
今私は、世界中に広がる青い空に飛び立つ飛行機を眺めながら、地上を駆けずり回っている。


「日本エア航空102便にご搭乗の、新垣(あらがき)様ー! 新垣(ひろし)様、いらっしゃいませんかー?」
< 1 / 20 >

この作品をシェア

pagetop