俺様パイロットに独り占めされました
日本エア航空102便。
午後一時二十分発の、札幌便だ。


現在、午後一時十五分。
ファイナルコールも時間通りにアナウンスしたし、乗客の搭乗もスムーズだった。
もうとっくにゲートクローズしているはずが、チェックイン済みのお客様が乗っていないと機内から連絡があり、私は羽田空港の出発ロビーを、隅々まで探し回っている。


七月に入り、社会人では少し早めの夏休みを取る人もいて、先月に比べるとだいぶ旅客も増える時期だ。
広いロビーは、人の熱気が溢れている上、節電対策で、エアコンの温度もやや高めに設定されている。
かっちりした紺色の制服姿の私は、じっとりと汗を掻いていた。


一度足を止めて、肩にかかるすれすれの長さの、茶色くカラーリングした髪を揺らし、グルッと辺りを見回す。


「新垣様! ミスター・アラガキ!」


切羽詰まって声を張る私を、旅客たちが素通りしていく。
私は、再び床を蹴った。
五センチのヒールがカーペットに沈み、なんとも走りづらい。


でも、見つけなきゃ。
飛行機の離陸が、遅れてしまう……!


この便に限っては、遅延させてはいけないという使命感よりも、そうなることで受けるお咎めの怖さの方が強い。
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