新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
『大きくなる存在 丈二SIDE』
 いつからだろうか、完璧な自分を演じることに慣れたのは。

 物心つく頃から何度も父親に言われてきた言葉がある。『丈二、お前は常に誰よりも優れていなければならない。それがお前のためなんだ』

 その頃から父親の決まり文句となった、『お前のためなんだ』はまるで呪いのように俺に重く圧し掛かった。

 幼少期は友達とも自由に遊べず、習い事の日々。そうなると学校でも自然と浮いた存在となり、俺に近づいてくる友人はいなかった。

 なにもかも父親に決められた人生だった。進学先も結婚相手も、『お前のためだ』と言われて。
 思春期にはそれなりに反発もし、どうして新川の家に生まれてきたのかと、自分の人生を恨むこともあった。

 しかし陸という唯一無二の友人と出会えたことと、幼い頃から付き合いのある彩香という存在に救われた。

 また、成長するにつれて父さんがどのような立場にいるのか、どんな仕事をしているのかを理解できるようになり、俺にどうして完璧を求めてくるのかも、わかるようになった。

 そうなるとこの家に生まれた以上、運命を受け入れるしかないと思いはじめたんだ。

 それに嘆くことばかりじゃない。親友と出会えたし、結婚相手は妹のように可愛がっていた彩香だ。
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