両親の死を回避してから、あっという間に一年と半年が過ぎた。

母ミリアは手芸など家の中で出来る新たな楽しみに目覚め、必要以上に外に出ることはなくなってしまったが、父スコットは以前通り臆することなく精力的に仕事に勤しみ続けている。

とは言え、スコットからあの夜の恐れが消えたわけではない。

両親を助けるべく聖魔法を使うその姿はまさに女神だったと人々の間で話題になっている自慢の愛娘が、今度は標的にされるのではと日々不安を募らせている。

そんな父からの診療所通いも含めてしばらく外出を控えて欲しいという懇願を断れるはずもなく、ロザンナは魔法薬の書物を自宅で読みふける日々が続いた。

アカデミー入学まであと一ヶ月。

準備に追われていたロザンナだったが、入学前に父の命を救ってくれた恩人へ挨拶だけでもしておきたいと、久しぶりに診療所を訪ねることにした。


「こんにちは」


戸口から中を覗き込み、眉根を寄せる。

太陽が高いこの時間、普通なら大勢の患者で賑わっているはずなのに、待合室には誰の姿もない。

どうしたのだろうかと立ち尽くしていると、診察室からゴルドンが姿を現した。