一生ものの恋をあなたと
専務秘書になる 〜蓮〜
社会人3年目。

専務秘書になって1ヶ月が過ぎた。
最初は戸惑いの連続だった。
前秘書の山村さんからの引き継ぎ。
奥さんの介護のための引退だったため、引き続き期間が短く、覚える事が一気に増えた。
しかも、同行出張の数が多い。
MATCHAシリーズの海外進出の為、上海への出張も増えていた。

専務の斎さんは昨年から、中国への進出に向け、北京語の習得にも取り組んでいた。
日常会話はほぼマスターしている。
俺も、斎さんの秘書になった時から、上海への出張同行を考えて、中国語会話のレッスンを受け始めた。

意外なことに、中国語会話の講師は若い女性だった。
斎さんは周囲に誤解を与えるような行動は極力控え、仕事でも女性の扱いには慎重にになっている。
何故なら、この夏、ついに長年婚約関係にあった美央さんと結婚式を挙げることになったからだ。

そう。
あの時の男は、やはり斎さんだった。
愛の親友、美央さんの婚約者だ。

美央さんはこの春、大学院を卒業し、スクールカウンセラーとして、母校に勤務している。やっと学生生活を終え、結婚に漕ぎ着けたらしい。
馴れ初めを聞けば、出会いから今年で20年目になると言う。
以前、愛からも“長年の付き合いの婚約者がいる”とは聞いていたが、まさかそこまで幼い頃からの関係だと思わなかった。

そう言うわけで、女性と距離を置いていたはずの斎さんの中国語講師が女性なのは意外だったのだ。

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