183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
私の前では素顔のままでいて。離婚まであと120日

蒸し暑さの続く六月上旬。

昨晩から雨が降り続け、真衣のイライラに拍車をかけていた。

今日は十時半から会議があった。

終わったのがつい先ほどで、時刻は昼休みに入ったところである。

ノートパソコンと紙の資料を抱えた真衣は、会議室を出て階段を下り、三階の廊下を歩いている。

噛みしめた唇が、少し痛い。

(柊哉が憎い。うちのチームが半年かけて作ったものを、簡単に却下するなんて。あの男、どうしてあげようか……)

チームで開発した学資保険の新プラン案を、社長以下、重役四人と、関係部署の部長職数人が揃う中でのプレゼンであった。

割と自信を持って臨んだというのに、副社長の顔をした柊哉に、真っ先にこう言われたのだ。

『魅力が薄いですね。他社製品と比較して抜きん出たものがないようです。少子化の今、学資保険は特に顧客の取り合いです。他社製品から乗り換えてもらえるとは思えません。商品名は覚えやすいですが古臭さが否めない。顧客は若い年齢層の夫婦だということをもっと意識してください』

柊哉がそう言うと、プレゼン中は頷いてくれていた小峰社長も、『そうだな』と否定的な見方をし始めた。

社長は芹沢家の親類ではなく、三年ほど前に外部から入った人である。

なんとなく会長の息子である柊哉に合わせているような、頼りなさを感じた。

ひとりだけ、これでいいのではと言ってくれたのは、白川専務だ。

四十五歳の白川専務は、柊哉の姉の夫、つまり義兄である。

副社長、社長の意見に同調せず、企画部の社員の努力を評価し、肯定的な意見を述べてくれたので、真衣は白川専務に好感を抱いた。

それに比べて柊哉は……。

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