7・2 の自尊心
7・2 の自尊心




「じゃあ、明日のランチはどうする?」

昼休み、同僚達と人気のカフェに出かけた帰り、ごく当たり前のように翌日のランチについてのミーティングがはじまった。

「明日は新規開拓してみない?」
「でも天気も良さそうだし、テイクアウトして公園で食べるのは?」
「明日も暑そうじゃない?紫外線も気になるし」
「そうかなぁ?食べてる間だけなら平気でしょ」

それぞれに希望を出し合う彼女達は賑やかで、楽しそうだ。
ところが、

「そう?じゃ、白河さんに決めてもらおうよ」

名指しで意見を求められたわたしは、瞬時に身を硬くした。


以前なら、こんな風に何人もの同僚達とランチするなんて考えられなかった。
けれどどういうわけか、最近のわたしは、この “仲良しグループ” に加わっていたのだ。
それほど親しいわけではないけれど、なんとなく一緒にいる、そんな関係性。

わたしは自分に集まった彼女達の視線に焦りつつ、

「…新規開拓もしてみたいけど、テイクアウトも良さそうだし……ちょっとすぐには決められないかも」

どっちつかずの返事をした。

優柔不断なようだけど、実際、新規開拓もテイクアウトも選びがたかったのだから、仕方ない。
どちらかを選べば、もう一方の提案を否定するわけで、それはわたしには難しかったのだ。

すると彼女達は一瞬微妙な間を作った。

ああ、答えを間違ったかな…そう悔やんだそのときだ、


日菜子(ひなこ)?」

背中側から、柔らかくて落ち着く、男の人の良い声が届いたのだった。

まるで救いの手を得たようにホッとしたわたし以外の全員が、その人物に色めきだった。







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