あたしを撫でる、君の手が好き。
ふわふわ、揺れる。


放課後の教室。

机の上に突っ伏して泣く、彼女の栗色の髪が揺れていた。


「どうしたんだよ?」

その理由を知っているくせに、敢えて意地悪く訊いたら、彼女が顔を伏せたまま鼻を啜った。


「フられた」

グズグズと鼻を鳴らす、彼女の声がひどく掠れている。

彼女が泣くのを見るのはあまり好きじゃない。だけど、今は泣いていることにほっとしている。

その結末をどこかで望んでいた自分に罪悪感を覚えながら、彼女が小さく動く度に揺れる、ふわふわの髪に手を差し入れた。

いつも何でもないふうにそうしているけれど、本当はこのふわふわに触れる度に、心臓が激しく鼓動する。

それがどれほどのものなのか、彼女は一生知らないままかもしれない。


「そいつ、見る目ねぇな」

髪を撫でながらぽつりとつぶやくと、彼女の肩が僅かに揺れる。

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