土曜日。創立記念パーティー当日。

オトワホテルを貸し切った会場は到着してすぐに人であふれていた。
自動演奏ピアノがクラシック音楽を奏で、絨毯の敷き詰められたホールには頂き物のお花が飾られている。

先に向かった父はすでに来賓と楽しく会話をしており、私も透さんと一緒に知り合いの面々にご挨拶を済ませた。

完璧な所作でご挨拶をする透さんを横目で見て、私は不安を隠せずにいる。
ついに当日になったのに、なにも解決していないのだ。

いつもお世話になっている司会の方に確認すると、今日のプログラムの最後にはバッチリ「婚約者お披露目」の時間がとってあった。
この時間になったら、もう取り返しがつかない。

「……透さん」

透さんはにこやかに私の腰を抱いて周囲に会釈をして歩きながら、「大丈夫だって」と同じ台詞をささやくだけ。
本当に? もうパーティーも始まってしまったのに。

美砂とはサロンで会ったが、仕事場に寄っていくという池畠さんを待ってから向かうらしく、私とは別行動。
まだ姿が見えないし、それも心配だ。