最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
心の靄もだいぶ薄くなってきた、十月中旬の日曜日。結子さんにもらったおさがり以外で足りないものを買いに行こうと、ひとりのんびりと駅から離れたショッピングモールへ出かけた。
ベビー用品が充実しているので、ここまで足を延ばしてみたのだが、ナチュラル系の小さな服や靴が飾られたショップの前に来て、私は唖然とした。
よく知っている短髪の男性が、新生児用の可愛らしいカバーオールを広げてじっと眺めていたから。
「たっ、高海!?」
「……げ」
思わず声を上げると、勢いよくこちらを振り向いた彼が、両手で服を摘まんだまま固まった。人を見るなり、顔をしかめて『げ』とはなんだ。
それはさておき、高海がベビー用品のショップにいるとは、予想外もいいところ。
「なんでこんなところにいるの?」
「俺の友達夫婦にも子供が生まれたから、出産祝いを買いに。……つっても、なにがいいかわかんねぇけど、とりあえず見に来た」
水玉模様にレースがついたカバーオールを綺麗に畳んで元に戻した彼は、含みのある目線をこちらに向けてくる。