強引な無気力男子と女王子
 甘くてとても美味しい。
 イチゴの甘みに一人で浸る。
 このクレープ買ったときも、可愛い衣装着た店員の女の子にジロジロ見られてたんだよね。
 今だってすれ違う生徒にはずっと見られてるし。
 ここまで注目されるとなんだか息が詰まるっていうか・・・。
 悠理の人気を甘く見ていた。
 「やっぱりちょうだい」
 「え?」
 パクッ。
 急に喋った悠理が私の持ってるクレープを一口かじった。
 「うげ、ゲロ甘」
 「クレープなんだからそういうもんなんだよ」
 甘い甘いと言いながら悠理は顔をしかめた。
 甘いのが苦手なら最初っから食べなかったらいいのに。
 「だって、真紘と関節キスできると思ったから」
 「え?」
 私は手に持っているクレープに視線を落とす。
 そこには私と悠理がかじったあとがしっかりと残っている。
 数秒後。
 「な、ななななな・・・!?」
 じっくり時間をかけて私は悠理が言った言葉の意味をようやく理解した。
 「確信犯!?」
 「・・・・・・」
 いつもどおり、悠理は無表情。
 私は金魚みたいにパクパク口を開閉する。
 「ここに直接してほしい?」
 「は、はぁ!?」 
 悠理は長い人差し指の先で私の唇にチョン、と軽く触れる。
 「バカ悠理!ここをどこだと思ってんの!?」
 「どこって、学校」
 それはそうだけど!
 学校なことが問題なんだよ!
 真面目な顔で、そんなこと言うんじゃないよ!
 「まあ、断られてもするけど」
 「え、ちょっと」
 反論しようとしたのに、その隙を与えず悠理は私の唇に自分の唇を重ねた。
 「「「「ぎゃーーーーー!!!」」」」
 もちろん、見ていた女子からは悲鳴を通り越して奇声があがる。
 一方の私は顔を真っ赤に染めて、その場に硬直することしかできない。
 何事もなかったかのように一人で数歩前に歩いた悠理が振り返る。
 「真紘?来ないの?」
 「行くけど・・・!悠理のバカ!」
 私はそれだけ言って悠理の隣に並んだ。

 悠理の甘々度合いが更におかしくなってきている気がする・・・。
 文化祭も無事(?)に終わり、教室の後片付けを行う。
 一段落ついたところで、私はため息をついた。
 悠理はあれからも、何回か往来の場でまるで誰かに見せつけるかのように私にキスをしてきた。
 往来の場でだよ!?
 いや別に、嫌ではないけどさ・・・。
 でも、限度って物があるじゃん!?
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