強引な無気力男子と女王子
第四章

お勉強会

 「ま~ひ~ろ~!」
 「なになになになに」
 物凄い勢いで日葵に抱き着かれて、私は「なに」という言葉を四回も言いながら日葵を引きはがした。
 「勉強教えて!勉強会しようよ!」
 「ええ~・・・」
 只今、先生から一学期の期末テスト発表がされたところ。
 連音さんから『テスト中はテストに専念したほうがいいから、撮影はなしにしといたよ』と言われたので、遠慮なくテスト勉強しようとしていたところなのだが。
 勉強が苦手な日葵にそう泣きつかれたわけである。
 というか・・・
 「日葵!そんなこと大声で言わないでよ!」
 「え?どうして?」
 「だって・・・!」
 「柳井さん、勉強会するの!?」
 「私にも勉強教えて!」
 「真紘くんの家でするの!?私行きたい!」
 ほら、こうなっちゃうから!
 女子高でもないのに、この扱いは本当に何なのだろうか。
 というか、中学の時もそんなものだったし。
 ガヤガヤ、周りの野次がうるさくなったので私はその場を離れることにした。
 「ごめんね?私、みんなに教えるほど教え方もうまくないし、何より余裕がないんだ。だから、余裕ができるまで、待ってくれるかな?」
 にっこり、王子の仮面を被ってそう言うと女子たちは「うん!」と一斉に頷いた。
 ちょろい。
 私はそのまま日葵を連れて、静かに教室を出た。

 「日葵!」
 誰もいない階段の踊り場に日葵を連れてきて、私は日葵を睨む。
 「ごめんごめん」
 笑いながら謝る日葵は本当に反省しているのか疑わしい。
 「教えて!お願い!」
 「駿樹さんに教えてもらえばいいじゃん。確か、頭良かったでしょ?」
 中間もテスト上位だった気がする。
 「それが、今ちょっと喧嘩中で・・・」
 私が駿樹さんの名を口に出すと日葵はちょっと気まずそうな顔をしてそう言った。
 喧嘩なんて珍しい。
 まあ、どうせ惚気しか返ってこないから理由は聞かないけど。
 「つまり、日葵は私に勉強を教えてもらうより、『勉強会』を開いて駿樹さんも呼んで、仲直りのきっかけを作ってほしいわけね?」
 「すっごい真紘!まだそこまで言ってないのに!なんでわかったの!?」
 だって顔に書いてるし。
 でもなぁ・・・。
 喧嘩してるラブラブカップルと同じ空間にいてるなんて、ちょっと嫌かも。
 なんか気まずいし・・・。
 「あ!真紘も誰か呼べば!そしたら3人だけにならないし!」
 そんな私の心の内を見透かしたように日葵が言う。
 いい考えかもしれないけれど。
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