「おう真紘!久しぶりだな!」
 「久しぶり、龍羽」
 テストが終わり、私は久しぶりにスタジオ兼溜まり場に足を運んでいた。
 「テスト、どうだった?」
 「まあ、普通だったよ」
 「俺、頭悪いんだよなー」
 龍羽と、いつもの調子で会話をする。
 そんな和やかな空間を破るように、龍羽のスマホの着信音がなった。
 「出たら?」
 「母さんからだ。ワリ、ちょっと出てくるわ」
 そういって、龍羽はリビングを出て行った。
 元々、リビングには龍羽と千晴くんの二人しかいなくて、龍羽が出て行ったことで取り残されたのは私と千晴くんの二人だけ。
 ‥‥‥沈黙が気まずい。
 千晴くんは相変わらずスマホ見てるし。
 会話一つない時間が続く。
 よし、私も気にしないでおこう!
 これは私の勝手な予想だけど、千晴くんは、多分女嫌い。
 現に、私が女だと判明してから、話しかけてくれなくなった。
 変に話しかけて、女嫌いが進行してもまずいし。
 私は一人で持ってきた文庫本を読むことにした。

 「ねえ、真紘」
 「へっ!?」
 しばらく続いた沈黙を破って、千晴くんが私に声をかけた。
 「‥‥‥何、今の声」
 「ごめん。話しかけられると思ってなくて‥‥‥」
 あははははは。
 情け無い笑い声が出る。
 「真紘ってさ、その、女の子からいつも告白されてるんだよね?悠理から聞いたんだけど」
 「あー、まあそうだね‥‥‥」
 千晴くんの真意がいまいち掴めない。
 でも、折角話しかけてくれたんだから、少しでも多く話したいな。
 「真紘ってさ、そういうのに偏見って‥‥‥ないの?」
 「そういうのって‥‥‥同性愛ってこと?」
 「うん」
 おっと難しい質問だ。
 偏見はない。
 ただ、下手な答え方をしたくなかった。
 「私は、その子の好きって思う気持ちを止めることは出来ないし、その子が好きになりたいと思う人を好きになったらいいと思う。
好きって、コントロール出来るものじゃないし。ただ、告白断られたからって、ビンタとかはやめてほしいな‥‥‥」
 そこまで言って、後半はただの愚痴になっていた事に気づく。
 「あっ、ごめん!後半私の愚痴で‥‥‥」
 「本当に、本当に偏見ないの?もし、同性愛者がいたら、異性を好きになるように矯正しようとしない?」
 私の謝罪の声は、千晴くんの声によってかき消された。
 「‥‥‥しないよ。私には、その子の好きな人を指定する権利がないから。それに、好きな人を好きになるなって言われても、その子の為にならないで、逆に傷つけちゃうでしょ?」