強引な無気力男子と女王子
 「悠理?」
 「辛かったね、真紘。もう大丈夫」
 不思議と、涙が引っ込む。
 「俺は、真紘のことが、真紘の中身が大好きだから」
 悠理が柔らかな声でそういえば、私の気持ちも落ち着いてくる。
 「悠理、ありがとう・・・。本当にありがとう」
 「ん」
 自然と二人の距離が縮まって、なくなる。
 唇が重なる。
 ただ触れるだけのキスで、リップ音が部屋に響く。
 ふ、雰囲気が甘い・・・!
 こんな甘い雰囲気になったのは初めてで、恥ずかしくて俯く。
 「真紘」
 「・・・っん、ぅ」
 私を逃がさないとでもいうように悠理は私の顔を上げさせ、深いキスをする。
 身体中の血が顔に集まったみたいに、顔が熱い。
 「真紘、顔真っ赤」
 「う、うるさい・・・」
 否定するも、その声は小さい。
 「・・・寝よ、真紘」
 「ふぁ!?」
 ねねねねね寝よ!?
 何を言い出すんだ!?
 「悠理!?」
 「・・・スゥ、スゥ」
 「は?」
 一気に脱力してしまう。
 隣を見ると、悠理は穏やかな顔で眠っている。
 ・・・なんか、私が変態みたいじゃん。
 というか、寝るのはやっ!
 さっきまで、起きてたじゃん。
 しかも、ここソファだし。
 言いたいことはいっぱいあったけど、過去のずっと私にのしかかっていた黒い感情を話せたからか、私にも眠気が襲い掛かってくる。
 まぁ、今日ぐらいはいいかな・・・。
 悠理の肩にもたれかかって、瞼を閉じる。
 
 翌日。
 私より少し早く目覚めた悠理に「危機感を持って!」と怒られた。
 解せぬ。
 ちなみに、モデルの皆には私と悠理が付き合ったことはすぐばれた。
 皆曰く「悠理の機嫌が物凄くいい」らしい。
 モデル内恋愛禁止とかいうルールもなくて、素直に祝ってもらった。
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