ONLY YOU~過ちの授かり婚~
愛人契約
会社の融資は頭取の尽力のおかげて何とかこぎ着けた。
でも、予断は許されなかった。首の皮が一枚繋がった感じだ。

頭取から誘われ、大手町にあるハイブランドがひしめき合う高層ビルの最上階のイタリアンレストランでディナー。

「本当に有難うございました。頭取」

私は目の前に悠然と腰を下ろす彼に向かって深々と頭を下げる。

「別に…俺は君の働きに応えただけだ」

池袋支店の山田支店長は噂によれば、出向会社に左遷。
事実上、出世街道から外れてしまった。

「私の働きって…大した働きは…」

「いいや…内部勢力拡大の歯止めに大いに役立ったよ」

彼の表情はほくそ笑んでいるように見えた。

「・・・さぁっ、祝杯だ」

彼はスマートな所作でスパークリングワインをフルートグラスに注ぐ。

黄金色の液体。
シュワシュワと炭酸の泡がグラスの底から溢れ出す。

「私が注ぎます」

彼からワインボトルを受け取り、彼のフルートグラスに注ぎ入れた。

硝子越しに見える東京の夜景は二人のディナーを極上に演出する。

カチンとグラスを重ね、スパークリングワインを煽った。



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