そろそろきみは、蹴られてくれ。
きみには敵わない
「紗奈ちゃん、どうしてそんなに可愛いの?」
「わたしはべつに可愛くないし、いきなりそんなこと聞かれると怖い」
「だってさぁ、おれ、暇なんだもん」
「わたしは忙しいんだけど……」
今日、わたしは日直。いまは黒板を消している。
──橘の隣で。
あの先生、筆圧強い……ぜんぜん消えない。
上のほうなんて特に。背伸びをして、力を込めて、何度も黒板消しを動かす。
やつ──黒板の壁が高い。こいつは手強い敵だ。身長160センチメートルのわたしじゃ、まだ時間がかかりそう。