溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
症例6
症例6

 和也くんと一緒に暮らしはじめてからも、夢のような日々はあっという間に過ぎていく。

 忙しくしている和也くんとは、四六時中一緒にいられるわけではないし、相変わらず連絡もそう頻繁ではないけれど以前のように不安になることはない。

 ……多少、不満に思うことはあるけれど。

 午後の休憩中。待合室に置くための雑誌を買ってきた真鍋さんがパラパラとめくる。そこに和也くんの写真を見つける。

「はぁ、中村先生大活躍ね。嘘みたいな笑顔だわ」

 たしかに雑誌の中の和也くんは、爽やかな笑顔を浮かべてそのあたりの芸能人なんかよりも随分素敵に見えた。

「まさかこんなに人気が出るなんてねぇ」

 和也くんが世界一カッコいいって思っているわたしだって、こんな事態になるとは予想もしていなかった。

 きっかけは恩師の代わりに出たお昼の情報番組だ。あのときに番組のプロデューサーから目をつけられ、次々に番組に呼ばれて、一気にメディアでの仕事が増えた。

 本人は本業に集中したいから断りたいけれど、病院のいい宣伝になると言われて渋々引き受けているようだ。

 その効果もあって、病院のほうは活気を取り戻し……というより、不祥事が起きる前よりもずっと経営状態は良好なようだ。

「まあこれだけ忙しかったら、なかなか一緒に過ごせなくても仕方ないわよね」

「はい。昨日も急患で結局実家のほうに泊まったみたいで……」

「それって、浮気じゃないの?」

「えっ!」

 声をした方を見ると、君島先生がちょっと意地悪な笑顔を浮かべていた。

「ちょっと、君島先生! 不安になってる瑠璃ちゃん煽ってどうするの?」

 真鍋さんが注意してくれるが、わたしは急に心配になってきた。けれど空元気で言い返す。
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