遺書
日常
私は学校から寄り道せずに家に帰り、冷蔵庫から昨日作った肉じゃがをタッパーに入れる。手提げ袋にタッパーと一枚のファイルを入れて制服のまま出掛ける。目的地までは歩いて20分程度、私は鼻歌交じりに通い慣れている歩道を歩く。歩道の端に等間隔に並んでいる桜の木は先週まで頭上を一面の薄桃色に染めていたが、今はその中に若葉を覗かせている。
今年の花見もそろそろ終わるな、と考えていると目的地であるボロアパートに到着した。そのアパートの一階角部屋の扉の前まで行きチャイムを鳴らす。しばらく様子を伺うが、部屋の住人が出て来る気配はない。
私は母から預かっている鍵で扉を開ける。そしていつものように明るく声をかける。

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