【番外編】好きの海があふれそう
晩夏の口づけ
玖麗と付き合って1ヶ月が過ぎた。



まだ暑さの残る9月の土曜日。



今日は玖麗の部屋に来てる。



こんなにお互いの家を行き来してるのに、まだキスすらしてない俺たち…。



さすがにキスくらいしたい…。



玖麗の方を見ると、ベッドでくつろぎながら、ベッドの下に座る俺の髪の毛をなにかいじってる。



「悠麗、杏光と違うシャンプー使ってるでしょ」

「そうだけど…」

「やっぱり。匂いが違うもん」



玖麗は俺の気持ちなんか知る由もなく楽しそうだ。



俺はキスどころかその先までしたいのに…。



俺の性欲をナメないで欲しい。



振り向いて、ベッドにあがった。



急なことにびっくりする玖麗。



そのまま玖麗の上におおいかぶさった。



このままシしてしまおうか…。



でも…。



力をなくしたように、玖麗の肩に自分の顔を沈めた。



そもそもゴムがないし、それに何より玖麗を大事にしたい…。



もっとゆっくり二人の時間を濃密にして、玖麗が心からしたいって思うまでは我慢…。



玖麗の上からどいた。



「ごめんな…。怖かった?」

「う…ん? 怖くはないよ? びっくりしたけど…」



玖麗はこの葛藤には気づいていないらしい。



いいよ、俺はいくらでも待ちます…。



だけどキスくらいは、さすがに…。



玖麗はベッドから降りて、机の方へ。



「この前机整理してたら、おもしろいのが出てきたの」

「ん?」



俺も玖麗のあとを追って、玖麗のことを後ろからふわっと抱きしめた。



玖麗が恥ずかしそうに俺の方を振り向いた。



その反応がかわいい…。



「なに、おもしろいのって」

「あ、えっとね」
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