【番外編】好きの海があふれそう
机の引き出しから、何かノートを出した。



『1年B組 暮名 玖麗』と丁寧な字で書いてある。



中学のときのノート?



玖麗がそのノートを開いて見せた。



ところどころ、端が破れているページがある。



「あたし達、最初の方、席が前後だったでしょ? だからたまに手紙のやりとりしてた跡だよ」

「なるほどな~。懐かしいな」

「でしょ? だから悠麗に見せようと思って!」



そう言って笑顔を見せる玖麗。



ん~、可愛すぎる…。



いやまじで、俺の彼女可愛すぎないか?



玖麗が客観的に見て美少女っていう認識はあったけど、付き合いはじめてから可愛さがダダ漏れしすぎてる。



人に見せるのもったいねえ…。



玖麗が減る…。



「この頃あたし、悠麗とこうやって何気なく手紙やり取りするだけでドキドキだったんだよ」



そう言う玖麗。



そっか、ずっと好きでいてくれてたんだもんな…。



それに気づかなかった俺のアホさと申し訳なさ、そして玖麗の健気さにますます愛おしくなる。



思った以上に玖麗のことが好きすぎる…。



もう一度強く玖麗を抱きしめた。



「ゆ、悠麗…。苦しい…」

「あ…悪い」



つい夢中で…。



玖麗が楽しそうに、ノートを広げ、置いてあるテーブルに座った。



俺もその隣に座る。



「悠麗、絵しりとりしよ!」

「絵しりとり?」

「うん、ヒント無しで本気でやるの」



俺はそれよりキスしたいけど、玖麗がやりたいって言うことを一番にしようじゃないか。



ていうか俺が本当にしたいことは玖麗がやりたいことをやらせてあげることだ。



「じゃああたしからね」



そう言って、シャーペンで何か描き始めた。



これは…ウサギだ。
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