追放された公爵令嬢、隣国で成り上がって全てを見返す
ペトラには前世の記憶がある。

こことは違う別の世界で生きていた頃の記憶だ。

前世のペトラは、容姿に強いコンプレックスを抱えていた。

100人中100人がブサイクと断言する容姿だったのだ。

化粧や整形でどうにかなるレベルではなかった。

容姿のせいで虐められ、壮絶な人生を送ってきた。

そんなペトラだからこそ、容姿の力を誰よりも知っている。

顔が良ければ、余計なことを言わない限り、人生は上手くいく。

自分の容姿を再認識したことで、ペトラに力が湧いてきた。

「すみません、私、ポロネイア王国から来ました。この町で暮らしていこうと考えているのですが――」

ペトラは適当な人間を捕まえて尋ねる。

女の敵は女ということもあり、彼女は男に尋ねた。

優しさから顔から滲み出ている40代半ばの白髪男性だ。

「仕事は掲示板の求人を参考にして、あとは住民登録ですね。分かりました、ありがとうございます」

男は丁寧に答えてくれて、ペトラの疑問は解決した。

仕事の探し方も、この町や王国での過ごし方も、何もかも分かった。

「君、仕事と住む家を探しているんだよね?」

その男がペトラに尋ねる。

ペトラは素直に「そうです」と頷いた。

「では私の経営する魔物牧場で働かないかい? 妻に先立たれてからは1人で経営しているのだが、最近はあまり体調が良くなくてね。今から求人広告を出そうとしていたところなんだ。住み込みで働けば、家を探す必要もないよ。家賃だって払わなくていいから、お金を貯めやすいと思う」

魔物牧場とは、その名の通り家畜として育てている牧場のことだ。

通常の牧場に比べて、安定感に欠ける一方、短期間で結果を出しやすい。

その為、一山当てようと魔物牧場を営む若者が一定数は存在していた。
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