茉莉花の花嫁
わかっている。

もうわかっている。

自分の気持ちは、自分が1番わかっている。

「――何で…!?」

歩きながら叫んでいる清瀬を、周りは何事かと言うように驚いて見ていた。

だけども、今は周りの視線を気にしている場合じゃなかった。

「好きになったからって、何だよ…!」

清瀬は両手で頭を抱えた。

「俺も俺で、何で気づいたんだよ…」

気づかなければよかったと、心の底から思った。

(“茉莉花の花嫁”――いや、嶋佐茉莉花が好きなんだ…。

俺は彼女を好きになってしまったんだ…。

花嫁とか呪いがどうとかじゃなくて、彼女そのものを好きになってしまったんだ…)

気づいてしまったその事実に、自分が置かれた運命に、清瀬は声をあげて泣きたくなった。
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