茉莉花の花嫁
「ヤだ、離して!」

茉莉花はつかまれたその手を振り払おうとした。

「本当に悪かった…!

あの時は本当どうかしていたんだ…!」

「聞きたくない!

言い訳なんか聞きたくない!

あなたと話をすることなんかない!

もう離して!

私の前からいなくなって!」

茉莉花は何度も怒鳴った。

こんなにも怒鳴ったのは、今日が初めてかも知れない。

「もうどこかに行ってよ!」

ようやく、茉莉花は熊元の手を振り払った。

その時、熊元の後ろに誰かがいることに気づいた。

「あっ…」

その人物の姿に、茉莉花は小さく声をあげた。

彼は悲しそうに眉を下げると、その場から立ち去った。

「清瀬さん!」

思わず呼んだ茉莉花の声は聞こえていないと言うように、清瀬は振り返らなかった。
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