独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
政略結婚の裏側

「どうして妊娠していてほしかったか。それさえも伝わっていないのだろうね」

「それは……」

 頭に浮かぶのは、口にするだけでも寂しいものばかり。

「俺は、それを口実に東京でも会いたかったからだ。いや、それは後付けの理由だが。全て話そう。長くなると思うけど、聞いてくれる?」

 穏やかな口調で言われ、旅行中のあの頃に戻り、石垣島の夢を見ているような気がしてくる。

 どこの誰だかわからない小娘に、優しくしてくれた。『村岡物産の社長の娘』としての私ではなく、ただの由莉奈として。

 私が迫ったから抱いてくれるくらいには好意を持ってくれていると、夢を見ていられるような関係。

 でも、現実は会社同士の繋がりで、出会いからなにもかもが仕組まれていて。

 口実を設けて東京で会いたいのも、なにもかも全ては会社のためなのだろうなと、諦めにも似た心境でいた。
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