紅に染まる〜Lies or truth〜
闇夜



「今日の颯の予定は?」


「俺も愛と一緒」


「え?」


本家に一緒に顔を出すということ?
そこまで深く関わるとも思っていなくて


素の表情を見せてしまった


「これからはどこへ行くのも
全て愛と一緒だから」


新手のストーカーの様な口振りに
小さくため息を吐き出した

久しぶりの田嶋の家へ行くのに
念入りに支度をする

少しメイクをして
髪を巻く様子をずっと見ている颯

鏡越しに目が合うたびに微笑むから
なんだか居心地悪い


「可愛い、すっげえ可愛いよ愛」


「クラスの女達、愛がこんなに可愛いってなんで気づかないんだろ」


「なぁ愛」


「俺は幸せ者だな」


「学校で愛より可愛い子いないよな」



何度も何度も‘可愛い’と繰り返すから
最後は無反応に戻れた

三崎が迎えに来る時間まで
まだ1時間ある

まとわりつく颯を追い払いたくて
 

「コーヒー」


「お、おぅ」


漸く1人になれた


田嶋の家で何て挨拶するつもりなのか?
颯を連れて行くだけで父の反応が面倒なことになりそうで気が重い

憂鬱な頭の中を振り払うように
良い匂いに誘われて立ち上がった

リビングのソファに座ると
目の前のテーブルに置かれたカップ

いつもは向かいに座る颯が
隣に座った


「なぁ、愛の親父さんってどんな感じ?」


「どんなって?」


「俺、お袋だけしかいなかったからさ」


「普通だと思うよ、娘に甘い」


「甘い・・・か」


この時の私にはこの質問の意味が分からなかった




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