紅に染まる〜Lies or truth〜

玄関のチャイムが鳴ると
私のバッグを持って手を繋いだ颯


「なんのつもり?」


「護衛だからさ」


「・・・」


護衛が彼氏気取り?
そんな疑問を浮かべながら
玄関のドアを開けた


「おはようございます愛様・・・っ」


いつもの嘘笑いの三崎の顔が
一瞬で鋭くなった

睨むように見つめる視線の先は
颯と繋がれた私の手
 

「お前は、なんで?」


低く落とした声は颯に向けたもの


「俺は愛の護衛っす」


揺るがない颯の軽い喋りに
三崎の頬がピクピク引きつっている


「颯も連れて行くから」


助け船を出すつもりもなかったのに

この状況を終わらせたくて口を挟んだ


「組長に知らせていません」


「私から説明するわ」


引く様子もない私の態度に
少し肩を落とした三崎は
諦めたように

「では」と誘導し始めた

地下の駐車場へ降りると
既にドアが開かれて待っているフルスモークのベンツ

後部座席に颯と座ると
滑るように発進した

ルームミラー越しにチラチラと視線を動かす運転手

その視線が私と交わることはないから
間違いなく颯を見ている


「見たことない顔よね?」


運転手に声をかけたのに


「愛様、これは本家の芝浦尚也《しばうらなおや》です。お忘れですか?」


答えたのは助手席に座る三崎だった


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