身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
9.歩き出そう、手を繋いで



「おめでとう!」
「おめでとうございます!」

店休日前日お店を閉めた後、私は店舗のスタッフたちと駅前の居酒屋にいた。手渡された花束は今日勤務だった佐富くんが初めて作ってくれたものだ。

「ありがとうございます。私事の報告なのに集まってもらっちゃってごめんね」

私は照れながら頭を下げた。

「何言ってるの! 店長が、まりあちゃんのパパと元サヤに納まったんだから! お祝いしなきゃ!」

阿野さんが歯に衣着せぬ物言いで拍手をし、他の若いスタッフたちが苦笑いしている。今日は私の結婚のお祝いで、店を閉めた後にスタッフが全員集まってくれた。

「いやあ、お恥ずかしい限りです。勤務態勢は変わらないので、安心してね」

私の左手の薬指には、修二が以前用意してくれた指輪がある。普段は水仕事をするのに不便なのでつけないでいるけれど、今日は一応お披露目のために装着中。ちょっと恥ずかしいけれど。

「明日引越しなんですよね。どこに住まわれるんですか?」
「え? そこのマンション」

尋ねられて、私は居酒屋の窓から、駅前のマンションのひとつを指差す。

「近っ!」
「前より職場近っ!」

スタッフが総出で突っ込んでくれる。

「だって、まりあの保育園を探し直すのは大変だし、私が遅い日はやっぱり両親にお迎え頼んだりするから。まりあも今の園好きだから、なるべく環境を変えたくないんだよね。結果、この街から動かないことになりました」
「旦那さんはいいんですか?」

旦那……その単語に頬が熱くなりそうになる。そうか。修二はあらためて私の旦那さんになるんだよなあ。
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