その手をつかんで
「明日花さん、なんか顔色悪くない?」

「緊張しているせいなのか、ちょっとお腹のあたりが痛くて……」

「今も痛んでいる?」

「はい、少し……」


仕事帰りの蓮斗さんは、カバンからなにかを取り出し、私に向けた。それは、ふた粒の白い錠剤。

受け取りながら、その薬と彼を交互に見る。


「うちの胃薬なんだけどね……あ、なにか食べてからのほうがいいから、これもどうぞ」

「ありがとうございます。すごいですね、用意がいいというか……」

「仕事帰りじゃないと、さすがに持っていないけどね。そうだ、こっちでもいいかも」


次に出てきたのは、ゼリー飲料と栄養補助食品のお菓子。どこかのキャラのポケットみたいにいろんなものが次から次へと出てくる便利なカバンだ。

もらったゼリー飲料を飲み、そのあとに水なしで服用できるという胃薬を口に放り込む。噛み砕くようにと言われたので、咀嚼しながら外を眺めた。

車は横浜の方へと向かっている。どこまで行こうとしているのだろうか。

あまり遠くまで行くと、帰りが遅くなる。
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