その手をつかんで
「あの、蓮斗さん……どちらへ行かれるのですか?」

「ああ、まだ食事には早いからドライブでもとね。もしかして、酔いそう?」

「いえ、大丈夫です」

「もし眠くなったら寝てもいいからね。寝たほうが痛みも和らぐと思うよ」


仕事があったのに迎えまで来てくれて……疲れているだろうに、運転までしてくれる人の隣で寝られない。

しかし、しっかり目を開けていたはずなのに、いつの間にか船を漕いでいた……。

薬を飲んだからかとはいえ、眠ってしまうとは、失態だ。


「明日花さん……明日花ちゃん……着いたよ」

「ん、んー? えっ、ああー! すみません!」


車はどこかの駐車場に止まっていた。知らぬ間に椅子が倒されていたので、私はガバッと起きる。謝ってから、改めて周囲を見渡した。

薄暗い中で目を凝らす。緑が多い場所だけど、ここはどこだろう?

キョロキョロする私の肩に蓮斗さんの手が置かれる。


「気分はどう?」

「おかげさまで、痛みがなくなりました」

「ご飯、食べれそうかな?」

「はい」


安心したように微笑む蓮斗さんに、降りようと促された。彼の後を付いて入った場所は、フレンチレストラン。洋風な門扉の先には、洋館のような建物があった。
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