その手をつかんで
今、さらりと告白めいたことを言わなかった?

私の聞き間違いかな?


「キャッ、聞いた?」
「聞こえちゃった」
「好きだって、キャー」

近くにいた大学生くらいの女子三人組がひそひそと騒ぐ。

聞き間違いではなかったようだ。

だけど、こんなところで言わなくても……私は顔を熱くして、蓮斗さんにちらりと目を向ける。


「ごめん」


突如謝って、口元を覆う彼の顔は赤みを帯びていた。思いがけない姿に目が丸くなる。


「えっ?」

「今、言うべきことじゃなかった……つい……」


思わず口にしてしまったみたいで、蓮斗さん自身も自分の発言に動揺していた。

まだ三人組が私たちの様子を窺っていたから、逃げるように会計を済ませて、外へ出る。

夜風が熱くなった顔を冷やしてくれたが、胸の鼓動はおさまらない。

私の住んでいるマンションはコンビニの隣の隣で、ここから入り口も見えるくらいの距離にある。

帰ろう……帰れば、きっと落ち着く。


「あの、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ……あ、明日花」


蓮斗さんは離れようとした私の手首をつかんだ。


「さっきのは、本心だから」

「あ、はい……」


帰宅してからも、私の心はしばらくジタバタ暴れていた。
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